【パネル洗浄は投資】WWBが語る市場拡大と協議会への期待

「パネル洗浄による発電量の改善は、新設に匹敵する価値を持つ」。太陽光発電事業をトータルにサポートし、豊富な自社保有設備を運営するWWB株式会社は、太陽光パネル洗浄協議会による基準づくりと、洗浄による価値創出に期待を寄せる。協議会とともに描く、次の一手に迫った。
太陽光発電所の企画からEPC、O&M、事業後のリユース・リサイクルまで、発電事業をワンストップで手掛けるWWB株式会社。2030年までに保有発電容量1GWを目指す同社にとって、パネル洗浄の重要性は高まるばかりだ。同社は、パネル洗浄の課題と意義をどのように捉えているのか。そして、この先、パネル洗浄市場にどうアプローチしようとしているのか。同社取締役 SI本部長の田中孝佳氏に聞いた。
費用対効果の明確化に向けて協議会による基準づくりに共感
──パネル洗浄への取り組み、高まるニーズとは?
当社では発電所の売買も行っておりますが、発電所の売却にあたっては、やはり第一印象が価格に影響を及ぼします。住宅の売買と同じで、汚れた状態よりもきれいな状態の方が評価されますので、汚れが目立つ案件については、お客様の現地案内に先立って洗浄や除草等の対応をするケースもあります。今後、中古発電所の取引が増加していくなか、そういったニーズが高まっていくと考えられます。
自社で保有している発電所については、発電量の回復を目的とした洗浄も行ってきました。しかし、他社に向けてのO&Mサービスとして、洗浄をメニューに加えてはいませんでした。とはいえ、お客様からの問い合わせは増えてきており、今後は積極的に洗浄の提案もしていきたいと考えています。
お客様の中には、FIT制度が始まった当初に分譲された発電所を保有している方も多くいらっしゃいます。そうしたお客様からは、「発電量が落ちた」という声を聞くことが増えてきました。設置から10年が経過すると、性能的な劣化に加えて、点検時に確認するとモジュールがかなり汚れているケースも少なくありません。
これまで洗浄に大きな力を注いでこなかった背景には、費用対効果を正確に算定することの難しさがありました。もちろんWWBとしても、自社で運営・管理する発電所のデータを基に費用対効果を試算してきましたが、1社で集められるデータには限界があったのも事実です。
太陽光パネル洗浄協議会は、その“使命”の冒頭に「洗浄の費用対効果を明確にする洗浄前および洗浄後の診断手法の開発」を掲げています。まさに、これこそが我々の求めていたものだと言っても過言ではないでしょう。洗浄の重要性を客観的なデータで示し、費用対効果の算定手法や評価基準を整備し、業界の道標になってくれることを期待しています。実際には、汚れの状況は発電所によってまちまちであり、統一的な基準をつくることは容易ではないと思いますが、だからこそ個社の限界を超えた協議会の役割は極めて重要です。
費用対効果が明確になれば、お客様も洗浄を“投資”として認識してくれることになるでしょう。必要な洗浄の種類と頻度、売電収入のアップ率とコストが前もって分かれば、洗浄がより普及していくことは間違いありません。当社の営業活動においても、そうした情報は大いに役立ちます。「これだけの投資で、これだけの効果が見込めます」と明確に示せるようになれば、積極的な営業展開も可能になります。
──パネル洗浄市場にどうアプローチしていくのか?
FIT制度が始まった当初、太陽光発電はメンテナンスフリーと言われていましたが、その時期に建設された発電所もすでに10年以上が経過しています。こうした発電所こそ、いま洗浄の必要性が顕在化しているところです。
また、40円で運営している高単価FIT案件と、14円で運営している低単価FIT案件では、洗浄によって増加する売電収入も大きく異なります。ですから当社としては、まずは洗浄の効果が大きくでる古い高単価FIT案件にアプローチをかけ、洗浄の市場規模を拡げていきながら、コスト低減を図っていきたいと考えています。
現状では、洗浄業者の数も少なく、薬剤や人件費の高騰も課題です。しかし、普及が進み機械の改良などが進めば、価格面でのメリットも、より大きく出せるようになるでしょう。太陽光パネル洗浄協議会には、洗浄の重要性を前面に打ち出していただき、業界全体で洗浄を当たり前の取り組みとする流れをつくっていただければと思っています。

パネル洗浄による価値創出新設に匹敵する脱炭素効果も
──パネル洗浄の社会的意義とは?
現状、設置から10年ほど経って一度も洗浄を行っていない発電所が、日本各地に数多く存在します。そうした発電所で効果を実証することができれば、日本全体にとっても大きな価値を生み出せます。洗浄によって発電量を3〜5%改善するだけで、再生可能エネルギーを新たに3〜5%増やすのと同じインパクトをもたらすことができるからです。
モジュールの性能は年々低下していきますが、洗浄を行うことでその下がり方を緩やかにしたり、発電量を回復させることができます。その意味で、洗浄はリパワリングの一手法であると言っても良いでしょう。新規に発電所を建設する場合、大規模な案件では森林伐採や造成を伴うことが多く、社会的にもネガティブな見られ方をされがちです。しかし洗浄であれば、環境に負荷を与えることなく、発電量を増やすことができるのです。
洗浄による発電量の改善は、新しい発電所を建てるのと同等の効果を持つ場合もあります。これは事業者にとってのメリットであるだけでなく、国全体の再エネ発電量を増やすという観点からも非常に有意義な取り組みだと思っています。
──将来に向けて想うこと
第7次エネルギー基本計画では、発電電力量に占める太陽光発電の比率を、現状の2~3倍に伸ばすことが掲げられています。これを本当の意味で成し遂げるためには、発電設備を新設するだけでなく、これまでに設置された設備の発電量を維持・向上させていくことも極めて重要です。そしてパネル洗浄が、そのために欠かせないものであることは間違いありません。
洗浄市場は、まだまだ発展途上にあります。だからこそ、業界全体で、この市場を正しく盛り上げていくことが大切だと考えています。そこには、洗浄をベースにした新たなビジネスが立ち上がってくる可能性もあるでしょう。協議会の皆様とともに洗浄市場の成長を支え、脱炭素社会の実現に貢献していければ幸いです。
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